20160112

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「感情が形を持つには、映画なら映画の他にもうひとつ、自分以外の何か対象が必要なのである。感情はその外部との出会いや衝突によって生まれる。ある風景に出会い、美しいと思う。しかし、では美しさというのは僕の側にあったのか?それとも風景の側にあったのか?私という存在を中心に世界を考えるか、世界を中心に考え私をその一部だと捉えるかによってそれは180度異なる。僕が作品を生んでいるのではない。作品も感情もあらかじめ世界に内包されていて、僕はそれを拾い集めて手のひらですくい、「ほら」と見せているに過ぎない。作品は世界との対話(コミュニケーション)である。この世界観を謙虚で豊かだと考えるか?作家としての弱さと考えるか。この対立は根源的だ。」

是枝裕和さんの著書「歩くような速さで」から、いいなと思った文を抜粋しました。
自分がものをつくる上で、共感をするところがいくつかあって。

美しい景色を見つけた日のことや、季節の変わり目を感じた日のことを忘れないでいたい。
過不足なく、誰にでも世界は美しく豊かであると、ことばではない何かを通じて、ぼくらに伝えてくれている。
その時、自分はどんなかたちで返事をすることが出来るだろうか。

生活も仕事も、自分が主体となって回っている営みはなく、あるひとつの世界が発した声に対して、どう私は返事をしたか、声色や声質、表情や気持ち、あらゆる要因が複雑に絡み合って出来た結び目のようなものなのではないかなあと思う。

世界との対話。

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